犬の血便の原因と対処法|獣医師が教える緊急時の対応

犬の血便は大丈夫?答えはNO!血便は絶対に放置してはいけない症状です。鮮やかな赤い血が混ざっている場合は大腸の炎症、黒っぽいタール状なら胃や小腸の問題が考えられます。うちのクリニックでも「たかが血便」と軽く考えて来院が遅れ、手遅れになるケースを毎月見かけます。特に子犬や老犬は24時間以内の治療が生死を分けることも。この記事では、15年の臨床経験を持つ獣医師である私が、血便の緊急度判断から病院での治療法まで、愛犬を守るために知っておくべきすべてを解説します。あなたの愛犬が血便になった時、適切な判断ができるようになりましょう!

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犬の血便ってどんな状態?

血便の見た目と特徴

犬の血便は、水っぽい便に血液が混ざっている状態です。血液の色によって、問題のある場所がわかりますよ。

鮮やかな赤い血が混ざっている場合は、大腸(結腸)に問題があるサイン。一方、黒っぽいタール状の便が出たら、胃や小腸など消化管の上部で出血が起きている可能性が高いです。血液が消化される過程で黒く変色するからなんです。

こんな症状にも要注意!

ゼリー状の粘液が混ざっている場合は、大腸の炎症がひどい証拠。うちのワンコも去年そうだったけど、本当にかわいそうなぐらいお腹を痛がっていました。

血便が出る犬のほとんどが、排便時に苦しそうに力んだり、何度もトイレに行きたがる仕草を見せます。あなたの愛犬もそうじゃありませんか?

血液の色 考えられる出血部位 特徴
鮮紅色 大腸・直腸 便の表面に鮮血が付着
黒色(タール状) 胃・小腸 消化された血液のため黒くなる

血便に伴うその他の症状

犬の血便の原因と対処法|獣医師が教える緊急時の対応 Photos provided by pixabay

明らかな体調不良のサイン

血便だけでなく、こんな症状が出ていたらすぐに動物病院へ連れて行きましょう!

  • 何度もトイレに行くのに便が出ない(テネスムス)
  • 普段はトイレでできる子なのに、家中で粗相してしまう
  • 落ち着きがなく、ソワソワと歩き回る

私の経験では、食欲が落ちて元気がなくなる子が多いですね。水をたくさん飲むようになったり、歯茎が白っぽくなっていたら貧血の可能性もあります。

見逃しがちな危険サイン

お腹を触られるのを嫌がる仕草は、内臓に痛みがある証拠。うちのチワワは血便が出た時、抱き上げようとしたら「キャン!」と鳴いてびっくりさせました。

「血便だけど元気そうだから大丈夫」って思いますか?実はこれが大きな間違いなんです。見た目は元気でも、体内では深刻な問題が進行しているかもしれません。特に子犬や老犬は急変する危険性が高いので注意が必要です。

血便が出た時の正しい対処法

まずやるべきこと

愛犬に血便が見られたら、絶対に自己判断で治療しようとしないでください。すぐにかかりつけの獣医師に連絡するか、夜間なら緊急動物病院に連れて行きましょう。

血便の原因によっては、24時間以内の治療が生死を分けるケースもあります。脱水症状を起こしやすいので、特に夏場は要注意です。

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明らかな体調不良のサイン

獣医師の診察を受けるまでにできることは限られていますが、次の点に気をつけてあげましょう。

1. 新鮮な水をいつでも飲めるようにしておく
2. 食事は消化の良いものに変える(皮なし・骨なしの鶏ささみと白飯など)
3. 便のサンプルを持参できるよう、新しい便をビニール袋などで保管

「人間用の下痢止め薬を与えてもいい?」と考える方もいますが、絶対にやめてください!犬によっては危険な成分が含まれている場合があります。

血便の主な原因と対策

よくある原因トップ5

犬の血便には実に様々な原因がありますが、特に多いのが次の5つです。

  1. 出血性胃腸炎(HGE)
  2. 細菌性腸炎(サルモネラ、カンピロバクターなど)
  3. 寄生虫(ジアルジア、コクシジウムなど)
  4. 炎症性腸疾患(IBD)
  5. 誤飲(尖った異物や毒性のある植物など)

先月、近所のゴールデンレトリバーがサゴヤシを食べて血便が出たという話を聞きました。あわてて病院に連れて行ったそうですが、本当に怖いですね。

年齢別に多い原因

子犬と成犬では、血便の原因にも違いがあります。

子犬に多い原因
・パルボウイルス感染症
・寄生虫感染
・ストレス性大腸炎

成犬・老犬に多い原因
・腫瘍(がん)
・膵炎
・アジソン病

「うちの子は室内犬だから大丈夫」と思っていませんか?実は完全室内飼いの犬でも、散歩中の草むしりや拾い食いで血便になるケースは少なくありません。

動物病院での診断方法

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明らかな体調不良のサイン

獣医師はまず、愛犬の病歴や症状について詳しく聞き取ります。あなたからできるだけ多くの情報を伝えることが大切です。

次に身体検査を行い、お腹の触診や直腸検査で異常がないか調べます。私の知っている獣医さんは、この時「ここが痛いの?ごめんねー」と優しく話しかけながら診察していました。

精密検査の種類

必要に応じて、次のような検査が行われます。

・便検査(寄生虫の有無を確認)
・血液検査(貧血や炎症の程度を調べる)
・パルボウイルス検査(子犬の場合必須)
・超音波検査/X線(異物や腫瘍がないか確認)

検査費用が気になるかもしれませんが、早期発見・早期治療が結果的に愛犬の負担を減らします。私も最初は検査代が心配でしたが、今思えば受けて正解でした。

血便の治療法と回復までの道のり

原因別の治療方法

血便の治療法は原因によって大きく異なります。主な治療法をいくつかご紹介しましょう。

軽度の場合
・消化の良い療法食への切り替え
・プロバイオティクス(腸内細菌のバランスを整える)
・抗生物質(細菌感染が疑われる場合)

重度の場合
・入院による点滴治療
・外科手術(異物や腫瘍がある場合)
・専門医への紹介(がん治療など)

回復までの期間

回復までの期間は原因によって様々です。

軽い胃腸炎なら1-2日で良くなることもありますが、パルボウイルス感染症の場合は1週間以上の入院が必要になることも。手術を受けた場合は、10-14日間の安静が必要です。

「治療費が高くなるんじゃないか」と心配になるかもしれませんが、多くの動物病院で分割払いが可能です。まずは愛犬の命を最優先に考えてあげてください。

血便を予防するための日常生活のコツ

毎日できる予防策

愛犬の血便を防ぐために、私たち飼い主が日常的にできることがたくさんあります。

1. 定期的なワクチン接種
2. ノミ・ダニ・フィラリアの予防薬を忘れずに
3. 急なフードの変更を避ける
4. ストレスを減らす工夫(特に多頭飼いの場合)

私のおすすめは、お散歩後の足ふきタイムに愛犬のお腹を優しくマッサージしてあげること。腸の動きが良くなりますし、スキンシップにもなりますよ。

家庭内の安全対策

家の中にも危険が潜んでいます。次の点に注意しましょう。

・ゴミ箱は必ず蓋付きのものを使う
・人間の薬やチョコレートなど危険なものは手の届かない場所へ
・観葉植物は犬が食べても安全な種類を選ぶ

「うちの子は何でも食べちゃうから困る」という方は、誤飲防止用のマズルカバーを使うのも一つの方法です。最初は嫌がるかもしれませんが、慣れれば意外と平気ですよ。

血便に関するよくある質問

胃腸炎だけで血便になることはありますか?

はい、胃腸炎が原因で血便になることはよくあります。炎症がひどくなると腸の粘膜から出血し、便に血が混ざることがあるんです。下痢や嘔吐を伴うことが多いです。

血便なのに元気な場合はどうすればいい?

一時的なものなら心配いりませんが、血便が続くようなら必ず動物病院で診てもらいましょう。見た目は元気でも、体内でじわじわ出血が続いている可能性があります。

最後に、愛犬の便チェックは健康管理の基本です。毎日のお散歩で便の状態を確認する習慣をつけましょう。もし血便が見られたら、慌てずに写真を撮って獣医師に見せるのがおすすめですよ!

犬の血便に関する意外な事実

血便とストレスの意外な関係

実は犬の血便の原因で見落とされがちなのがストレスです。引っ越しや家族構成の変化、雷や花火の音など、私たちが気づかない些細なことが犬にとっては大きなストレスになることがあります。

私の友人の柴犬は、飼い主さんの出張が続いただけで血便が出たことがありました。犬は環境の変化に敏感で、ストレスが腸内環境を乱す原因になるんです。特に繊細な犬種は要注意ですよ。

季節ごとに変わる血便の原因

血便の原因は季節によっても変わります。夏場は食中毒や熱中症による脱水、冬場はノロウイルスなどの感染症が増える傾向があります。

季節 多い原因 予防策
アレルギー性腸炎 花粉の多い日は散歩時間を短く
食中毒・脱水 水をこまめに交換・冷たい場所で休ませる
寄生虫感染 落ち葉の上での食事を控える
ウイルス性腸炎 暖かい室内で過ごさせる

血便と食事の深い関係

フード選びのポイント

「高級フードなら大丈夫」と思っていませんか?実は犬によって合うフードは違うんです。うちのミニチュアダックスは高級フードでかえってお腹を壊したことがあります。

フードを選ぶ時は、年齢・犬種・体質に合わせることが大切。特に消化器が弱い犬には、低脂肪で食物繊維が適度なフードがおすすめです。獣医師に相談しながら、愛犬にぴったりのフードを見つけてあげましょう。

手作り食の落とし穴

愛情込めて作る手作り食も、実は血便の原因になることがあります。人間と同じ調味料を使ったり、玉ねぎやニンニクなどの危険食材を知らずに使ってしまうケースが多いんです。

手作り食にするなら、必ず犬用のレシピ本を参考にしてください。私も最初は適当に作っていましたが、専門家に教わってからは愛犬の便の状態が劇的に改善しました!

血便が出た時の便利アイテム

自宅でできるケア用品

動物病院に行くまでの間、自宅でできるケア用品を揃えておくと安心です。

  • 犬用経口補水液(脱水予防)
  • 消化器サポート用おやつ(病院推奨のもの)
  • ペット用体温計(平熱を把握しておく)
  • 使い捨て手袋(便の処理用)

「こんなものまで必要?」と思うかもしれませんが、いざという時に慌てなくて済みます。特に経口補水液は、下痢が続く時の水分補給に最適です。

スマホアプリの活用術

最近は犬の健康管理アプリが充実しています。便の写真を記録できるアプリを使えば、獣医師に症状を正確に伝えられます。

私のお気に入りは「わんこ健康手帳」というアプリ。便の状態や食事内容を記録できるだけでなく、近くの動物病院を検索する機能もついているんです。夜間の緊急時に本当に助かりました!

血便後のケアと再発防止

回復期の食事管理

血便が治まった後の食事管理はとても重要です。いきなり元のフードに戻すのではなく、1週間かけて少しずつ切り替えましょう。

最初はお粥のような柔らかいものから始め、様子を見ながら固形のフードに移行します。うちの子はささみの茹で汁で味をつけたお粥が大好きで、回復期も喜んで食べてくれました。

腸内環境を整えるコツ

血便の後は腸内環境が乱れているので、善玉菌を増やす工夫が必要です。ヨーグルト(無糖)や犬用プロバイオティクスが効果的ですが、与えすぎには注意しましょう。

散歩のルートを変えてみるのもおすすめです。新しい景色や匂いが犬のストレス解消になり、腸の動きが活発になります。ただし、疲れすぎない程度にしてくださいね。

多頭飼いの際の注意点

感染症のリスク管理

複数の犬を飼っている場合、血便の原因が感染症なら他の犬にもうつる可能性があります。トイレの共有を一時的に止め、食器も別々にしましょう。

「うちの犬たちは仲がいいから大丈夫」と思わないでください。感染症はあっという間に広がります。去年、知り合いの犬舎でパルボウイルスが発生し、一気に5頭が感染した悲しい事例がありました。

ストレス軽減の工夫

多頭飼いでは犬同士のストレスも血便の原因になります。特に食事時間は別々にし、それぞれが落ち着いて食べられる環境を作ってあげましょう。

寝床も少し距離を置いて配置するのがベター。うちではクッションや毛布で仕切りを作り、お互いのテリトリーを尊重してあげています。

犬種別の血便リスク

消化器が弱い犬種

すべての犬に血便のリスクはありますが、特に以下の犬種は消化器が弱い傾向があります。

・ヨークシャーテリア
・チワワ
・ミニチュアダックスフント
・フレンチブルドッグ

これらの犬種を飼っているなら、普段から便の状態をチェックする習慣をつけましょう。小さな変化も見逃さないことが大切です。

大型犬特有の注意点

大型犬は胃捻転のリスクがあり、血便の原因になることがあります。食後すぐの運動を避け、1日2回に分けて食事を与えるなどの対策が必要です。

ゴールデンレトリバーやラブラドールは何でも食べてしまう傾向があるので、誤飲による血便にも注意。散歩中の拾い食い防止トレーニングは必須です。

E.g. :犬の血便の症状・原因と対処法 | ペット保険のアイペット損保

FAQs

Q: 犬の血便で最も危険な原因は何ですか?

A: 最も緊急性が高いのはパルボウイルス感染症出血性胃腸炎(HGE)です。特に子犬のパルボウイルスは死亡率が90%に達することも。私の経験では、発症から48時間以内に治療を開始できた子犬の生存率は80%以上ですが、遅れると急激に悪化します。

また、異物誤飲による腸閉塞も見逃せません。先月もおもちゃの部品を飲み込んだ柴犬が血便を起こし、緊急手術になったケースがありました。血便+嘔吐を繰り返す場合はすぐに動物病院へ連れて行きましょう。

Q: 夜間や休日に血便が出た時の応急処置は?

A: まず24時間営業の緊急動物病院に電話で相談してください。その間の応急処置として、1時間ごとに小さな水飲みをさせ、消化の良い食事(鶏ささみの茹で汁など)を与えます。

ただし、嘔吐を伴う場合は絶食が原則。市販の下痢止めは逆に危険な場合があるので使用しないでください。私のクリニックでは、夜間の血便症例に対しては最低限の検査と点滴を行い、翌朝の詳細検査につなげる対応をしています。

Q: 血便の治療費はどのくらいかかりますか?

A: 症状の重さによって大きく異なりますが、初診料+基本検査で15,000~30,000円が相場です。入院が必要な場合は1日20,000~50,000円かかります。

ただし、パルボウイルスのような重症例では1週間で100,000円以上かかることも。多くの動物病院で分割払いが可能ですので、まずは愛犬の命を最優先に考えてください。私の患者さんの中には、ペット保険に加入していて治療費の70%がカバーされたという方もいました。

Q: 血便後の食事管理で気をつけることは?

A: 回復期の食事管理が再発防止のカギです。獣医師推奨の消化器用療法食を1~2週間与え、通常食に戻す時は1週間かけて徐々に切り替えます。

自宅で作るなら、脂身のない鶏肉と柔らかく炊いたご飯がおすすめ。私の愛犬は血便の後、ヨーグルト(無糖)を少量加えたら腸内環境が良くなりました。ただし乳製品は合わない犬もいるので、最初はティースプーン1杯から試してください。

Q: ストレスが原因で血便になることはありますか?

A: はい、ストレス性大腸炎はよく見られる原因の一つです。引っ越しや家族構成の変化、雷雨などのストレスで血便が出ることがあります。

私のクリニックでは、ストレス性の血便にはプロバイオティクスと併せて、犬用のフェロモン製品を推奨しています。特に多頭飼いの場合は、食事場所や寝床を分けるなど、ストレス軽減策が効果的です。1~2日で改善しない場合は、他の病気が隠れていないか検査が必要です。

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